嶌田井書店

風の通る或る町に、稀にしか辿り着けない書店がある。

家登みろく・朝妻久美子『俳句・川柳共詠句集 混線』

篠田です。文フリ東京、お疲れさまでした。出店された皆様、一般参加の皆様、それぞれに楽しまれたでしょうか。

 

私が入手したものの中から感想を述べてみたいと思います。作者の方に伝わりますように、そして作品に興味を持たれた方に伝わりますように、と思います。

 

今回は家登みろく・朝妻久美子『俳句・川柳共詠句集 混線』です。

 

俳句と川柳について持っているイメージはどのようなものでしょうか。俳句は季語が入っているのですよね。「や」とか「かな」とか言ったりする、はず。川柳は、サラリーマン川柳みたいなやつ?ユーモアの入ってるやつ。

 

しかし、俳句も川柳もそれだけにとどまるものではないことを本書は教えてくれます。本書は、同じテーマでふたりの作者が独立して詠んだ句を集めたものです。

 

たとえば、「手帳」だとこういう感じ。

 

年新た手帳に繰り越す夢の数(みろく)
手帳から君がごっそり逃げている(久美子)

 

おおー。「初夢」はどうでしょうか。

 

初夢を忘れて今日を生きてをり(みろく)
幸せな人の初夢嗅ぎ回る(久美子)

 

こんなに自由なんだ、という感じがしないでしょうか。実に生き生きとしていて、現代を生きる人間の呼吸が伝わってきます。

とはいえ巻末のエッセイではお二人とも「自分のジャンルは難しい、大変だ」と書いていらして、短歌をやる私としては「そうだよなあ、大変だよなあ」と思うのですけれど。

575。57577よりは少し短いけれど、狭くはない世界の本でした。

 

(篠田くらげ)